白色申告の必要書類と注意点

白色申告の必要書類と注意点

白色申告とは、税務署に対して事前に承認手続きが必要なく、また家計簿のような簡単な帳簿でOKな申告です。そのため、初めて個人事業主となる場合は、白色申告で始める方が多いようです。そこで、白色申告で迷わないための必要書類の種類、そして注意しなければならないことについて解説します。

 

白色申告必要書類

白色申告に必要な書類は、3つあります。1つ目は確定申告書、2つ目は各種控除を受けるために必要な書類、3つ目は収支内訳書です。確定申告を行うための帳簿類や領収書、請求書等は必要なものですが、確定申告時に提出するものではありません。

 

また、申告書を提出するときにマイナンバーについて本人確認を行うため、本人確認書類の提示または写しの添付が必要となります。税務署に行って職員に直接提出するのであれば、マイナンバーカードか通知カードと運転免許証等を提示するだけで大丈夫です。申告書等を郵送したり、税務署の玄関においてある時間外収受箱へ投函する場合は、マイナンバーカードの表と裏をコピーするか通知カードと運転免許証等の2つをコピーして申告書と一緒に提出します。


■確定申告書

確定申告書は、「確定申告書A用」と「確定申告書B用」の2種類あります。「確定申告書A用」は主に給与所得者向けですので、「確定申告書B用」という様式を利用します。給与所得者で、副業等で事業を行っている場合も「確定申告書B用」となります。個人事業を始めた年は、自分で税務署に出かけるかインターネットから「確定申告書B用」をダウンロードしてください。2年目からは、屋号と名前が印字された確定申告書類が届きますので、それを使用します。

 

確定申告書は表と裏がありますので、忘れずに両方記入します。まず表の第一表には、ご自身の住所や職業、屋号等を記入します。次に収入金額やそこから経費等を差し引いた所得金額、そして所得から差し引くことができる各種控除などを記入して、最終的に税金額を計算します。サラリーマンの場合は、会社が税金を計算してくれていましたが、個人事業主になれば自分で税金額を計算します。

 

次は裏の第二表で、ここは第一表の数字を証明する箇所です。だから勝手に数字を記入することができないようになっています。所得の内訳は、収入金額と源泉徴収税額を記入します。法人でない場合、事業内容によっては予め税金が源泉徴収されていますので、源泉徴収税額は、忘れずに記入します。計算した税金より源泉徴収税額が多ければ還付されますので、源泉徴収票や支払調書等の原本を紙に貼って提出します。


■各種控除関係の書類

所得からは、様々なものを引くことでき、それを所得控除といいます。所得控除を受けるためには、それぞれの控除に必要な領収書や証明書等を税務署でもらえる「添付書類台紙」(なければA4の普通紙)に貼り付けして提出します。所得控除はいくつかあり、それぞれ必要な書類も異なります。

 

医療費控除はかかった医療費が、一定額以上の場合に控除されます。「医療費控除の明細書」という書類がありますので、それに従って記入し、確定申告書と一緒に提出します。世帯全員分が対象になり、領収書や医薬品購入のレシートをもとに計算します。医療費控除においては領収書等の提出は必要ありませんが、保管はしておきましょう。

社会保険料控除は、支払った健康保険料、介護保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料等を記入し、領収書を台紙に貼り付けして提出します。

小規模企業共済等掛金控除は、小規模企業共済、確定拠出年金に加入されている場合、支払った保険料を記入し、その領収書を提出します。

生命保険料控除は、生命保険と介護医療保険そして個人年金保険等で支払った保険料がそれぞれ最高5万円まで控除されるもので、支払った保険料の領収書を提出します。

地震保険料控除は、損害保険契約について地震等損害部分の保険料がある場合控除されるもので、保険料の最高25000円が控除されます。支払った保険料の領収書は提出します。

寄付金控除は、最近話題の「ふるさと納税」が多く、この場合自治体に寄付した金額から2000円を引いた金額が控除されますので、申し込んだ自治体から送られてきた証明書を提出します。

扶養控除や配偶者(特別)控除は、特別に書類は必要なく、申告書に記入するだけで終わりです。

 

上記ように所得から差し引くことができる所得控除とは別に、所得から計算した税金から差し引くことができる税額控除というものがあります。よく利用されるのが、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)で、税務署から送られてきた「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と金融機関からの「住宅ローン残高証明書」の書類が必要となります。


■収支内訳書

収支内訳書とは、1年間の収入や売上原価、かかった経費、家賃や給与等を記入して、所得金額を計算するものです。そのために、家計簿のような簡単な帳簿が必要となります。取引の年月日や売上仕入先の相手氏名、金額等を記入します。経費の場合は、通信費や旅費交通費、消耗品費等収支内訳書に記載されている科目に従って分けるとよいでしょう。支出があるたびに領収書をもらって経費別に記入して、まずは毎月合計をだし12月末に総合計を出して、収支内訳書に転記します。領収書は捨てないで科目ごとに分けて保管をしてください。

 

収支内訳書は表と裏の2面に分かれていて、裏は表に記入した売上金額や仕入金額の明細や減価償却資産の計算、地代家賃の内訳を記入します。売上や仕入の数字の裏付けです。

 

他に仕事をしないで専ら事業を手伝ってくれている家族に対しては、事業専従者として事業専従者控除が適用され最大86万円所得から引くことができます。専従者としての届出は必要ありませんが、収支内訳書に名前を記載します。ただし、その家族が他から収入を得ている場合は対象となりませんので注意が必要です。

 

白色申告を行う時の注意点

白色申告は決算書類を提出しなくてもよいため、複式簿記を使わずに数量や単価、金額を帳簿に記入すればだれでも簡単に作成することができます。しかし、それだけに数字を間違えずに売上や仕入れ、経費に関して全てを記入する必要があります。決算書類を作成する場合は、複式簿記を利用しているため、数字の間違いや記入漏れが発覚する仕組みになっているのですが、白色白申告の場合は、収支内訳書に帳簿に記入した数字を合計して記入するだけですので、記入漏れがあったり、計算を間違えたりしてもわかりません。自分だけで見直しをするのではなく、誰か別の人にも見てもらうとよいでしょう。

 

また、確定申告書の各種控除の証明書や領収書等は、紙に貼り付けして提出します。しかし、売上や仕入、経費等を記入した帳簿や請求書、領収書等は提出しませんが、保管が必要です。確定申告が終わって安心して捨ててしまう人がいますが、注意しましょう。税務調査などの対象となると開示する必要があるのです。法定では、売上や経費等が書かれている帳簿は7年間、それ以外の帳簿や請求書、領収書等の書類は5年間保管しますので、保管は7年と覚えておけば間違いはないでしょう。

 

保管の方法は自由ですので、ノートに日付順に貼り付けしたり、項目ごとにファイルや封筒に入れておく方法があります。ただし、まとめて一つの封筒に何もかも入れてしまうといざという時に不便ですので記帳するときに保管を考えながら仕分けをするとよいでしょう。

 

まとめ

白色申告に必要な書類は確定申告書、収支内訳書、各種控除を受けるための書類だけで、複式簿記による帳簿や決算書類は不必要です。事業を始めたばかりは営業等で忙しく、また利益もなかなかでないのが現状でしょう。そこで簡単な帳簿を付け必要な書類が少ない白色申告は、初心者マークの個人事業者にとってはうれしい制度と言えるかもしれません。

 

この記事を書いた人

菅田 芳恵

社会保険労務士、キャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナー等13の資格を活かして、様々な研修の講師やコンサルティングを行っている。女性の起業に関しては、ビジネスプランのみならず、確定申告や税金、帳簿の付け方等についても講義をしている。

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