フリーランスで契約を結ぶ上の注意点【契約形態別に解説!】

フリーランスで契約を結ぶ上の注意点【契約形態別に解説!】

企業と仕事をする際にはフリーランスの方であっても契約書を交わすのが一般的です。契約書というと弁護士など法律の専門家が作成するものと思われるかもしれませんが、フリーランスで弁護士に相談できる方は限られるでしょう。ここでは、フリーランスの方がご自身で仕事の契約を結べるようその注意点を契約形態別に解説します。

 

 

フリーランスと業務委託の違い

フリーランスの他に、個人で仕事を引き受ける時に使われる言葉に業務委託があります。それぞれの説明やその違いは以下の通りです。

 

■フリーランス

フリーランスとは働き方のスタイルの1つで、特定組織に属せず、仕事に応じ自身の専門知識やスキルを提供し対価を得るものです。

 

■業務委託

業務委託とは業務を受委託する取引のことで、フリーランスの方のものに限定されず、企業間でも頻繁に行われます。取引ですので契約を締結した上で着手するのが一般的です。

 

フリーランスにしても業務委託にしても特定の職種に限らず働き方や取引を示すもので、ITエンジニアやコンサルタント、デザイナーなどさまざまな職種に見られます。

 

フリーランスの契約形態は大きく2つ

一口に業務委託と言っても法律で定められたものではなく、実際にはその契約内容によって民法で定める(準)委任契約と請負契約との大きく2つに分かれます。フリーランスの仕事はこのいずれかが一般的です。

 

(準)委任契約

(準)委任契約は依頼元がフリーランスである貴方に仕事を委託し、あなたがそれを受諾するものです。その業務内容が法律行為である時には委任契約、それ以外の業務の時には準委任となります。

 

法律行為は契約締結や行政機関への手続きなど受任者が委任者に代わり第三者に対して行うもので、企業からの依頼としては限定的、ないしは受任するには内容に応じて司法書士、弁護士、税理士などの資格が必要になります。フリーランスの方が多く携わるデザイン、システム開発、コンサルティングといった依頼主に対して直接に仕事を行うものは法律行為にあたらず準委任契約となります。

 

(準)委任契約では委任された仕事の遂行に受任者である貴方は義務を負いますが、その完成義務を負いません。仕事の結果・成果物ではなく、どういった業務を提供するかにつきコミットします。

 

請負契約

請負契約は請負人である貴方がある仕事の完成を約束し、依頼主がその結果に対し報酬を支払うものです。準委任契約との対比で言えば、仕事の内容ではなくその結果や成果物に対してコミットします。

 

このように請負と準委任との違いは業務の内容ではなく、依頼された仕事に対し貴方が業務の結果・成果(請負)と内容(準委任)とのどちらに対し責任を負うかにありますので、準委任契約の例に上げたデザイン、システム開発、コンサルティングといった何れの仕事でも請負での契約もあります。

 

フリーランスの業務契約を結ぶまでの流れ

それではフリーランスで業務契約を結ぶまでの流れを見ていきましょう。

 

業務委託のお仕事に応募

フリーランスで仕事をしていくには仕事を探さなければなりません。業界の誰もが知っている有名人でもない限り、こちらから積極的にフリーランスの仕事に応募する必要があります。

 

フリーランスの仕事の募集を探すには、独立前の顧客・友人・知人に案件の紹介をお願いしたり、SNSなどで情報発信をおこなったりと自分で営業するのも一つの手です。多くの方がそれだけでは十分ではないので、依頼主とフリーランサーとのマッチングサイトやフリーランス向け求人エージェントなどを活用しています。

 

契約内容について話し合う

依頼主が貴方を依頼先とほぼ確定すると契約内容の詰めに入ります。契約内容で最も重要なのが業務内容や報酬、ならびに業務が完了したとみなされ報酬が支払われる基準です。ここで今回の契約を準委任とすべきか請負かが決まります。

 

依頼主からは貴方が結果・成果物の責任を持つ請負を求められるケースが多いかもしれません。しかし、デザインや設計からのシステム開発など依頼時に結果・成果物が決まっておらず請負とすると貴方に多大な責任・リスクが課せられるような仕事もありますので、お互いが納得するまで依頼主と貴方との間で話し合う必要があります。

 

他にも、(準)委任の場合には拘束時間の有無や勤務場所、請負であったとしても業務の進め方、報酬の源泉徴収の有無などを契約の中で決めておきます。

 

契約書の作成

契約書作成においてはドラフトを基にこうしたやり取りをMicrosoft Wordの変更履歴の記録機能を使いながら行うと効率的です。「業務委託」が契約書名によく使われますが、依頼主と確認し業務の性格とそれぞれの責任の所在を明確にするために内容に応じて委任、準委任ないしは請負契約書と明記するのをおすすめします。

 

依頼主である多くの企業はこれら契約書のひな形を持っておりそれを基に作成していく方が話は早いのですが、相手方に有利になっていることもありますので、自分の納得のいくひな形を用意しておき可能であればそれを基に調整していくという方法もあります。

 

契約書内容に合意したらお互いに捺印した契約書原本を2通作成、割印をし、双方が1通ずつ保管します。請負契約は法律により収入印紙の貼付が義務付けられています。契約内容に応じ収入印紙額が異なるので国税庁のHPで金額をご確認下さい。(準)委任契約は課税文書ではありませんので契約書への収入印紙の貼付は不要です。

 

契約を結ぶ上での注意点!

それではフリーランスの立場で契約を結ぶ事についての注意点を見ていきましょう。

 

労働関連法令の適用外であることを知る!

フリーランスは個人が特定の組織などに属さず独立して働くものですから労働基準法などの労働関連法令の適用外となります。つまり、自分の身は自分で守らなければなりません。業務委託契約はそのための一つのツールですが、そこに書かれた貴方の義務については貴方が責任を負うこととなります

 

交通費・経費の扱いは明確にしておく

契約時に漏れてしまいがちなのが依頼された仕事で必要となる交通費や経費の扱いです。これらが委託料に含まれるのか別なのか、その請求・支払方法も含め契約書に織り込む必要があります。委託料などの消費税の扱いや支払手数料の負担者についても契約書で定めておきましょう。


偽装請負などになっていないか

依頼主から貴方の業務の受け手として別の会社を案内される時には偽装請負や二重派遣が懸念されるため、貴方への業務指示を行うのは依頼主であることを確認して下さい。依頼主以外が業務指示を行うのであればそこと貴方の派遣元との間で労働者派遣契約を締結するか、それがなされないのであれば貴方に過度の業務負荷が強いられる可能性がありますので契約義務違反として今回の仕事を打ち切った方が得策かもしれません。

 

双方納得した契約内容か

仕事欲しさや企業相手に気後れしてしまい、納得しないまま相手の言いなりで契約してしまうケースも散見されます。たとえ依頼主が大企業であっても依頼主と貴方との取引・契約は対等の立場でなされるべきです。加えて、重ねての注意になりますが、フリーランサーは労働関連法令の適用外ですので自分の身を守れるのは貴方しかいません。

 

たとえば、請負では約束した成果物を提出するまで何度も手直しが生じたり、相手がいつまでも完成を認めず報酬を支払わなかったりしても、それが不当であることを明らかにしない限り依頼主は法的責任を問われません。場合によっては依頼主が貴方に瑕疵担保責任を迫ってくることもありえます。

 

契約書名を委託ではなく(準)委任ないしは請負とするよう述べましたが、準委任契約書とすれば準委任になるのではなく、その契約が(準)委任、請負の何れに当たるかはその契約内容で判断されます。それでも少しでも依頼主との認識のズレを避けるべく、契約書のタイトルでその性格を明らかにしお互いに納得した契約にするのが望ましく、納得のいかない報酬で多大な責任・リスクを負うようであれば取引の辞退も検討することをお勧めします。

 

報酬に関する支払い時期・請求書の提出期限の確認

仕事が完成しない場合には返金しなければなりませんが、請負でも依頼主との間で仕事の完成を待たずに報酬を前払いする取り決めも可能です。すべて業務完了後、あるいは業務進捗に応じた分割払いとするのかなど、業務委託では報酬の支払い方法・時期も依頼主と貴方との取り決めによります。報酬の支払いはその基準や時期も含めてトラブルの元になりがちですので予め契約の中でしっかりと取り決めを行いましょう。

 

企業の場合、支払いには請求書を受領してから数ヵ月掛かる所もありますので、決めた時期に支払いを受けるにはいつまでに請求書を届ける必要があるのかその期限も確認します。

 

トラブルが起こった際の責任の所在

これは契約書上ではなく仕事を進めていく上での注意点ですが、仕事がすべて順調に行くとは限りませんのでトラブルの際に責任の所在を明らかにできるようにしておきましょう。それには成果物や業務内容、スケジュールの変更などは依頼主と打ち合わせの下に行い、その結果ならびに原因や責任を含めて議事録を残すようにしましょう。

 

 記事まとめ

このように業務委託に関する契約は法律より実際にはその取引に係るもので、お互いに詳細にその業務・取引内容を確認し細かく定める事で、円滑に仕事を進め後々のトラブルを避けるためのものです。ですので、仕事上で契約を結ぶ際には臆せず前向きに依頼主に確認を取りお互いに満足できる仕事をするためのツールとして契約をご活用頂下さい。


この記事を書いた人

中ノ森 清訓

三菱商事、外資系コンサルティングファーム、GE等で経営コンサルティング、業務プロセス設計に従事。米国MBA留学後、米国SCMソリューション企業の日本事業立ち上げ等を経て2007年12月に独立、調達案件や調達・購買部門マネジメントの代行を行う(株)戦略調達を創業、経営にあたる。調達・購買を専門としていることから、業務委託につき自社業務において受託側、お客様の調達・購買業務代行として委託側と双方の立場で行っている


 

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