「テキストエディタの違いは作業効率に直結する」といっても過言ではないくらい、ライティングやプログラミングの際に欠かせないツールが「テキストエディタ」です。
ところが、テキストエディタにはさまざまな種類があります。
それゆえ、初心者の方からすると「どのテキストエディタを使えばいいのやら…」と作業前に“テキストエディタ選び”で頭を抱えてしまうこともあるのではないでしょうか。
そこで今回は、初心者の方でも安心して使えるおすすめのテキストエディタを紹介していきます。
紹介するテキストエディタはすべて無料のものばかりです。参考にしてみてください。
テキストエディタとは?
最初に「そもそもテキストエディタとは何か?」について説明します。
テキストエディタとは文字通り「テキスト(文章)をエディット(編集)するソフトウェア」のことです。
Windowsでは「メモ帳」、
Macでは「テキストエディット」が標準でインストールされています。
テキストエディタを利用することで、文章の入力・編集・検索・保存を行うことができます。
どのようなエディタがあるの?
「メモ帳」や「テキストエディット」のような標準テキストエディタでも文章を作成できますが、ライティングやプログラミング目的で利用する機会は滅多にないでしょう。その理由は大きく2つあります。
(1)標準テキストエディタは必要最低限の機能しか備えていないから
(2)用途に特化したテキストエディタが存在するから
たとえば、ライティング用エディタではMarkdown記法や縦書きに対応した機能など文章作成に必要な機能を備えています。プログラミング用エディタではコーディングの補完や「正規表現」という文字形式を指定した検索機能、プログラミング言語に応じたカラー強調表示などプログラミングに必要な機能を備えています。
テキストエディタをインストールした方が良い理由とは
用途に特化した機能を備えたテキストエディタをインストールした方が良い理由とはなんでしょうか。
その最たる理由が「作業効率」です。
テキストエディタで扱うデータは「文字」ですが、文字数が多くなればなるほど、どこに何を書いているかを把握するのが難しくなってきます。当然、入力ミスの機会も多くなってきます。
そんなとき特定の文字で色分け表示する機能があれば、どこに何を書いているか把握しやすくなります。入力内容を予測して補完してくれる機能があれば、自分でタイピングする必要がなくなるので入力ミスの機会を減らすことができます。
このように用途に合ったテキストエディタを利用することで、作業時間を短縮させたり、正確性を高めたりと作業効率に直結してくるのです。
ここからは初心者の方でも安心して利用できるエディタを中心に紹介していきます。
Windowsで利用できるエディタ
まず【Windows編】として、4つ紹介します!
サクラエディタ 〜まずインストールしたい〜
サクラエディタは日本発のテキストエディタのなかで最も知名度の高いテキストエディタです。オープンソースなので多くの開発者により機能が追加されており、カスタマイズ性にも優れています。
JavaやHTML、C、C++など標準で16種類の言語に対応したカラー強調表示の機能を備えています。PHPやPythonといった人気のある言語も設定を行うことでカラー強調表示できます。
他にも、特定の見出し記号や関数の位置などを解析して一覧表示する「アウトライン解析」、プログラミング言語固有の字下げ(インデント)を自動で挿入する「オートインデント」など、さまざまな機能を備えています。
一見地味ですが便利な機能としては【Alt+マウス】で範囲を指定して行う「箱型編集」です。データファイルの編集などで役立ちます。
数多くのエンジニアが使用している評判の高いテキストエディタです。
TeraPad 〜シンプル・イズ・ベスト〜
TeraPadはシンプルなSDIタイプのテキストエディタです。
シンプルではありますが、HTML、JavaScript、Java、PHP、Rubyといったプログラミング言語を編集できます。カラー強調表示、オートインデント、ルーラー表示などコーディングを行ううえで十分な機能を備えています。
システム系の会社の新入社員研修で利用するエディタとして採用されていることもあり、初心者の方でも比較的スムーズに扱うことができます。
TeraPadの嬉しいところは全角スペースを四角(□)で表示してくれるところです。
学習し始めのころは全角スペースエラーを起こしやすく、案外見つけづらいので厄介な不具合です。TeraPadであれば見た目でわかるので余計な時間を消費せず不具合を修正することができます。
EmEditor 〜高機能なのに動作が軽快〜
EmEditorは高速、軽量で拡張性のあるテキストエディタです。
動作速度は折り紙つきで、米国ZDNetは「世界で最も速いテキストエディタがさらによくなった」と評価しており、窓の社は「もうExcelはいらない?最強のCSVエディタ」と評価しているほどです。
カラー強調表示、ウィンドウの分割表示(最大4分割)、正規表現も利用できる検索・置換機能など、プログラミングに必要な機能を数多く備えています。中国語、韓国語、ヨーロッパ言語など多数の言語を扱うことができるのも魅力的です。
EmEditorの最大の特徴はやはり動作速度です。1000万行以上、1000万桁以上の大容量ファイルも軽快に表示できます。ログファイルなどの大容量ファイルの解析などで非常に便利です。
Notepad++ 〜海外でも人気〜
Notepad++はプログラマー向けに開発されたテキストエディタです。海外で人気の高いエディタのひとつです。
画面を分割表示できるので、複数ファイルの同時編集や類似箇所を表示しながらの編集が容易に行えます。また、「タブインタフェース」を採用しているので1つのウィンドウで複数ファイルを編集することもできます。
構文チェック機能、ソート機能といったプラグインも多数用意されており、拡張性が高いエディタでもあります。
IDE(統合開発環境)では当たり前の「関数の折りたたみ機能」がついており、ソースコードの全体像を把握しやすくなっています。
地味に嬉しいのは、フリーズなどで保存できなかった場合、終了時の状態を次回起動時に復元してくれる自動補完機能を備えていることです。
Macで利用できるエディタ
次に【Mac編】として、2つを紹介します。
CotEditor 〜ライティングにもプログラミングにも〜
CotEditorは国産のテキストエディタです。メニューも日本語表示なので初心者でもスムーズに利用することができます。次に紹介する、同じく国産の「mi」とよく比較されます。
CotEditorはHTML、CSS、JavaScript、PHP、Rubyなど多数のプログラミング言語に対応していますが、プログラミング用途であればmiの方がより適しています。ライティング用途であれば断然CotEditorがおすすめです。
カーソル位置時点での文字数や行数を確認でき、スニペットを利用すれば入力の手間を省くことができます。
文章作成に集中できる機能が備えてあり、作業効率が劇的に変わります。ちなみにこの記事もCotEditorを利用して作成しています。
mi 〜かゆいところに手が届く〜
miも国産のテキストエディタです。元の名を「ミミカキエディット」といいます。
とてもシンプルな画面構成で編集に集中できるインターフェイスになっています。
選択した「モード」(プログラミング言語)に合わせたカラー強調表示、関数や変数の入力補完、オートインデントなどのプログラミングに必要な機能を備えています。
なお、「モード」には「原稿用紙」など文書作成に特化したものもあるのでライティング目的でも利用することができます。
miには「マルチファイル検索」という機能があり、現在開いているファイル以下の領域にあるすべてのファイルを対象にした全文検索が可能です。開いていないファイルも検索対象になります。
Windows/Macの両方で利用できるエディタ
最後に【Windows・Mac対応】として、6つを紹介します。
1 Brackets 〜Webデザイナにおすすめ〜
2 liveweave 〜ネット環境があればいつでもどこでも〜
3 Sublime Text 〜恋に落ちるテキストエディタ〜
4 Atom 〜Git Hubが提供する高性能エディタ〜
5 Visual Studio Code 〜Microsoftの優れもの〜
6 Emacs 〜40年以上愛されている古株エディタ〜
Brackets 〜Webデザイナにおすすめ〜
BracketsはAdobeが提供しているテキストエディタです。Git Hubにて管理されています。
BracketsはHTML、CSS、JavaScriptで作られています。機能面でもWebデザイナに優しい機能が数多く備わっています。
たとえば、編集内容をブラウザにリアルタイムで表示する「ライブプレビュー」、対象となるコードのなかにウィンドウを表示する「インラインエディタ」、指定した色や画像をポップアップ表示してくれる「ホバークイックビュー」などです。
Webデザイナが多数のファイルを行き来しなくても編集できるようになっています。
なお最初から日本語対応がされているので、駆け出しのWebデザイナの方でもすぐ活用していくことができます。
liveweave 〜ネット環境があればいつでもどこでも〜
liveweaveはオンライン上で編集できるエディタです。これまで紹介してきたエディタはインストールが必要ですが、liveweaveはインターネット環境さえあれば即座に利用できます。
特徴はその名のとおり、リアルタイムでWebページを確認できることです。
画面が4分割(HTML、CSS、JavaScript、Webページ)されており、見た目や動作を確認したいときに非常に便利です。
アカウント登録をしておけば、他端末からも同じデータを編集することができます。もちろんスマホからの確認・編集も可能です。
Sublime Text 〜恋に落ちるテキストエディタ〜
Sublime Textは「恋に落ちるテキストエディタ」がキャッチコピーの海外産のテキストエディタです。
入力補完がとても優秀です。「閉じタグの自動補完」や「関数宣言のキーワードを元にテンプレートを自動生成」など、入力の手間を大きく削減することができます。
「Sublime Package Control」を導入すれば便利なパッケージを簡単にインストール、管理することができます。個々の使い方に合ったパッケージを導入することで自分好みにカスタマイズしていくことができます。
プラグインが豊富なので拡張性も高く、利用していくなかでいつの間にか「恋に落ちる」かもしれませんね。
Atom 〜Git Hubが提供する高性能エディタ〜
AtomはGitHub社が提供するオープンソースのテキストエディタです。
Atomの特徴はなんといっても豊富なパッケージです。機能面のパッケージだけでなく、見た目(アイコンやテーマ)に関するパッケージも様々あり、自分好みにカスタマイズしていくことができます。
「apm」というパッケージマネージャをインストールすればパッケージ管理が便利になるだけでなく、他のAtom環境にも同じ設定を引き継ぐことができるようになります。
プログラミングに必要な機能を十分備えており、しっかりとしたUIなので、初心者の方でも使いづらさを感じることなく利用できると思います。
Visual Studio Code 〜Microsoftの優れもの〜
Visual Studio Code(略称はVSCode)はMicrosoft社が提供するテキストエディタです。
Microsoft製品ですがMacでもLinuxでも利用可能です。
プログラミングに必要な機能を標準で数多く備えています。30種類以上の言語をサポートしており、デバッグ機能や「IntelliSense」と呼ばれる入力支援機能は作業効率を大きく向上させます。
また、統合ターミナルになっておりVSCodeからターミナルを操作できるのでアプリの行き来は必要ありません。VSCode内ですべての作業が完結するようになっています。
ソフトウェアアップデートも毎月のように行われており、サポート面でも安心して利用することができます。
Emacs 〜40年以上愛されている古株エディタ〜
最後に紹介するのは数あるテキストエディタのなかで最も歴史の古い「Emacs」です。
Emacsは1975年に作成され、以来40年以上世界中のエンジニアから支持されているエディタです。
カラー強調表示はもちろん、ファイルの差分を確認するdiff機能、デバッグ機能、grep機能などプログラミングに必要な機能を数多く備えています。 世界中の開発者が作成したパッケージも簡単に利用できます。
これだけだと他のエディタと大差ないように感じますが、Emacs最大の特徴はキーボードですべての操作が完結するように作られているところです。
マウスのない時代からあるエディタなので、キーバインドを使いこなせるようになればコーディングスピードが劇的に向上していきます。
この記事を書いた人
ササキモトユキ
SE × 講師。Ruby on RailsのWebアプリ開発を得意としPMとしても業務に携わる。新入社員研修の講師を務めており、これまでに述べ400名以上にプログラミングを教える。「作る」だけでなく「話す」や「書く」も好き。約80名が参加するライターコミュニティの主宰。