この記事は2020年4月24日に更新しました。
PMOとはProject Management Office(プロジェクトマネジメントオフィス)の略で、多忙なPM(プロジェクトマネージャー)をサポートする役割です。
この記事ではフリーランスのPMOコンサルタントとして働くことを目指す人に向けて、PMOの役割やPMOを目指すことのメリットについて解説していきます。
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)とは?
PMOは前述のとおりProject Management Office(プロジェクトマネジメントオフィス)の略で、プロジェクトに必要な資料の作成やプロジェクトの進捗管理など、マネジメント業務を行う組織を指し、プロジェクトを成功させるために重要な役割を担います。
一般社団法人PMO協会によると、一般的なPMOの主な役割は以下のとおりです。
・プロジェクトマネジメント方式の標準化
・プロジェクトマネジメントに関する研修など人材開発
・プロジェクトマネジメント業務の支援
・プロジェクト間のリソースやコストの各種調整
・個別企業に適応したプロジェクト環境の整備
・その他付随するプロジェクト関連管理業務
つまり、プロジェクトをより広範囲で把握・管理、並びに進行していく部門や仕組みのことです。
PMOの定義
情報システム用語事典では、PMOは以下のように定義されています。
大規模な組織において、組織全体のプロジェクトマネジメント(PM)の能力と品質を向上し、個々のプロジェクトが円滑に実施されるよう支援することを目的に設置される専門部署。「プロジェクトオフィス」「プロジェクト支援部門」などともいう。
一般に、個別プロジェクトに責任を持ち、プロジェクト終了に伴って解散となる「プロジェクトチーム」とは異なり、PMOは全社的なプロジェクトマネジメント手法の標準化、品質管理、人材育成などに責任を持つ常設的な部署として設置される。
大きな企業では部門や部署全体でPMOの役割を担うことがある一方、限られた人数でPMOとして働く場合もあります。
PMOとPMの違い
PMはプロジェクトの管理者としてプロジェクト進行にあたる意思決定を行います。スケジュールの調整、予算管理、トラブル対応などプロジェクトが計画通りに完了するよう努めるのがPMの役割です。
一方、PMOは、プロジェクトの管理業務全般の支援を行い、PMをサポートします。
タイプ別PMOの職種について
PMOは主に「支援型PMO」「管理型PMO」「指揮型PMO」の3つのタイプに分かれます。それぞれの特徴を記載します。
支援型PMO
事務局型とも呼ばれ、プロジェクトに対してほとんど権限を持たず、対外的な連絡窓口やプロジェクト内の事務作業などの庶務雑務、新規メンバーへの教育などが主な役割になります。
管理型PMO
プロジェクトが円滑に進むようにプロジェクトマネジメントを行います。プロジェクトのスケジュール管理を行い、必要に応じてネックになっている業務の課題解消に努めます。
指揮型PMO
情報の分析・会議のファシリテーションを通じてPMの意思決定の支援を行い、ひいてはプロジェクト全体の推進を担うことが求められます。いわゆる組織の参謀的なイメージです。また、プロジェクトが規定に基づいて実施されているかどうかの監査業務も行います。
PMOコンサルタントのニーズが増えている理由
近年、グローバル化、クラウド化などの影響でシステム規模が大きくなっています。それに伴い、社内のITプロジェクトマネジメント方式の標準化や研修などを通じて、実施中のITプロジェクト管理業務の支援、ITプロジェクト間の調整など、数十人規模の人材が要求される場合も増加しています。
一方、半分のプロジェクトが失敗に終わってしまうという現実があります。「ITプロジェクト実態調査 2018」によると、ITプロジェクトの失敗率はおよそ5割です。
より多くの人が関わるプロジェクトになればなるほど、失敗した場合の損失が大きく、リスクが高いため、より確実にプロジェクトを進行する体制づくりや予算、スケジュール管理のためにPMOコンサルタントのニーズが増えているといえるでしょう。
PMOコンサルタントになるには資格が必要?
まず、PMOコンサルタントに必須の資格はありません。
しかし、これからPMOコンサルタントを目指す方には、国際規格PMP(Project Management Professional)の取得をおすすめします。
PMの手法や知識などの標準化を推進する非営利団体プロジェクトマネジメント協会(PMI:Project Management Institute)が認定しています。
プロジェクトマネジメントの知識体系であるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)の知識は必須です。
PMOコンサルタントに必要な資格やスキル
PMOコンサルタントになるために、前述のとおり特別な資格は必要ありませんが、日本PMO協会ではNPMO認定資格者の証明として認定資格証を発行しています。(日本PMO協会認定資格)
基礎的なスキルとしてコミュニケーション能力、ステークホルダとの調整能力、フットワーク力、資料作成能力などは、いうまでもなくPMOコンサルトに求められるスキルです。
大規模プロジェクトでのプロジェクトマネジメント経験を通じた進捗管理、リスク管理、品質管理などの経験も重要です。なかでも進捗管理は、進捗状況を可視化するとともに毎日あるいはウイークリーのミーティングで危険な因子を見逃さず、適切に対策をとることが求められます。
システム開発、トラブル解析、品質向上策立案などの現場経験もあれば、よりPMOコンサルタントとして望ましいでしょう。
フリーランスでPMOコンサルタントになるメリットとは
フリーランスのPMOコンサルタントになるメリットは、以下のとおりです。
・社員コンサルタントに比べて高額な報酬を得ることができる
・企業に雇われず、プロのコンサルタントとして自分で仕事を選ぶことができる
・案件を選べるので、自身の望むスキルとキャリアを積むことができる
PMOコンサルタントの案件は、比較的高単価であることが、分かりやすいメリットの1つです。フリーランスとして案件を受託する場合、会社を通さず中間マージンが減るためなかには120万円以上/月の案件もあります。
会社員の場合も、成果報酬の給与形態で頑張れば頑張るほどお給料がもらえることもありますが、100万円以上/月の企業はそう多くないでしょう。
また、社員としてPMOコンサルタントである場合は、会社にアサインされたプロジェクトを遂行する義務があり、基本的には自分でプロジェクトを選ぶことはできません。
フリーランスであれば、自分のスキルにあったプロジェクトを選ぶことができ、特定の領域のスキルを積み重ねることができます。自分のスキルにあった案件、希望する報酬にあった案件を選ぶこともできます。
他にも、社員である場合は社内イベントなどプロジェクト以外の業務にも参加せねばなりませんがフリーランスであれば、該当の業務に集中することができます。
またフリーランスは、プロジェクトが終了すれば自由に長期休暇をとり英気を養ったり、今後の案件に備えて準備をしたりすることができます。
ただし同じ会社のメンバーではないため、対人関係を疎かにした対応をするとプロジェクト内で孤立してしまう危険もあります。関係者間でよい人間関係を構築しておくことは、フリーランスで活躍する場合ももちろん重要です。
コンサルティングファーム出身なら未経験でもチャレンジしやすい
フリーランスのPMOコンサルタントに、未経験からなるのはかなりハードルが高いです。
しかし、コンサルティングファーム出身のコンサルタントであれば、ファームでの実務経験がPMOに必要なスキルを習得しているため、PMOとして未経験だとしてもチャレンジしやすい職種と思われます。求人情報を閲覧しても、コンサルティングファーム出身者を優遇する記述がみられます。
フリーランスとPMOが「相性がいい」理由
PMOという職種は、プロジェクトの規模にもよりますが1人で業務を行える職種であり、過去の経験・知見も重要視されるため、フリーランスに向いているといえます。
また、PMOに求められるスキルは、「人」の経験やセンスによるものが大きく、会社で選ぶよりも人で選びたいという会社があります。
企業側の目線で考えると、優秀な希望するPMO人材に、会社員に比べると安価で業務を依頼できるメリットは大きいといえるでしょう。
PMOコンサルタントの求人例
金融・生保業界
最近はクラウド利用が活発ですが、このような業界では特定のレガシーサーバー( ※1,2世代古いサーバ機のこと)で新規開発、機能追加などする場合もあり、キーマンとして適度な忙しさで働くことができます。
日本企業でPMOを社員として比較的多く抱えているのは生保や金融系です。
このような業界では、特定のレガシーサーバー上でプログラムを走らせていたり、クローズドなシステムを維持していたりすることが多いです。その場合、既存の機能を維持しながら機能追加することはシステムに精通していることが必須で、内部のPMOが粛々と不足や問題部分をプロジェクトとして運営しているケースがあるのです。
こうした既存のシステムに精通しており、維持管理が必須であるようなPMOとして雇用された場合は重宝されることになるでしょう。新たなシステムの組み込みなどについても大きな権限を与えられることになる可能性もあります。
こうした特別なシステムを抱えている企業であれば新規システムとしてクラウドを組み込めない傾向にあるため、かなり忙しくキーマンとして働くことができることもあります。
新規事業
IT戦略立案やシステムグランドデザインなど、新しいシステム立ち上げやクラウドの利用など短期間での立ち上げを要求されることもあり、非常に忙しくなることが多いです。
とくに常に新たな事業展開を模索し、M&Aを含めて新しいシステムの立ち上げやクラウドの積極的な利用による超短期間でのAIシステムデザイン、インフラ系、既存システム統合等に責任を持つPMOともなると、極めて厳しいものになります。
いずれにしても、業務の難易度は、それぞれの企業の状況次第であることは覚えておきましょう。
フリーランスのPMOとして活躍する場合、これまで経験したことのない業界・業種でも一定期間内に成果をあげなければなりません。
業界、事業、会社のことをよく調べ、事前に背景知識などを入れておくこともスムーズなPMOとしての活躍の一助となるでしょう。
記事まとめ
フリーランスのPMOコンサルタントについてお伝えしました。
PMをサポートするマネジメント業務ではありますが、ビジネスの全体が見えていなければ務まりません。
新たにPMOを設置しようとする企業の内情はしっかりと確認することが大切です。フリーランスとしてPMOを目指す場合は、案件のある会社の状況をよく調査し、自分のスキルと要求される業務をよく精査しましょう。